2022年、リーダー作として100作をリリースし、100作という区切りをも、通過点として走り続ける藤井郷子による最新作品。
本作は東京トリオとしての第二弾。ベースは須川崇志、ドラムは竹村一哲。ストレートな主流派の演奏から、インプロヴィゼーションまで、瞬間瞬間に相互作用を起こす現代屈指のリズム・セクションとのトリオは、ピアノ・トリオという伝統的なフォーマットで、最高の即興劇を見せる注目の演奏だ。
結成は2019年8月。「最初にこのトリオで演奏した時から、すごくいい感じでした」と語る藤井郷子。2020年9月15日、3度目の共演となった新宿ピットインでの演奏が、作品『Moon on the Lake』となり、2021年5月にリリースされたが、活動はコロナ禍とスケジュールの都合上、一時阻まれることもあった。カオスと化した世の中の状況に加え、メンバーは、数々のバンドで活動し、多忙を極めるミュージシャンでもある。しかし、2022年の秋には、各地メディアで絶賛の評も得るヨーロッパ・ツアーを敢行。続く2023年春に日本ツアー。その最終日に録音されたのが本作『Jet Black』となった。
「須川さんも竹村さんも即興演奏がトップ・レベル。最近では作曲部分を減らして、即興による発展性のある展開により重点を置いています」と藤井自身が語る演奏は、Jazzwise誌で“テレパシーで繋がれたトリオのアンサンブル”と評されたことも象徴的。3人の演奏は、終始、緊迫した音の交感で、圧倒的な一体感も創り出す。複雑なリズムを、精緻を極めて繰り出すアンサンブル、オープンかつ、自在であり続ける即興は、形を変容させながらも、拮抗し、マックスのトライアングルを崩すことがない。
また静謐な抒情を感じさせる3トラック目から4トラックへの響きと、エネルギーあふれる演奏の交錯も鮮烈だ。
録音は渋谷公園通りクラシックスにて。結成から2年半、一瞬を研ぎ澄まし、進化するトリオ。その勢いは止まることを知らない。
藤井郷子 (p), 須川崇志 (b), 竹村一哲(ds)
2023年3月21日 渋谷公演通りクラシックス
Recorded Takanori Terabe / Mixed:Masataka Fujikake Mastered Mike Marciano (System Two, NYC)
01 | Along the Way | 6:25 |
---|---|---|
02 | Gentle Slope | 5:30 |
03 | Sky Reflection | 10:58 |
04 | From Sometime | 12:22 |
05 | Take a Step | 10:54 |
total time 55:59
All composed by Satoko Fujii (BMI)
1. Along the Way 6:25
2. Gentle Slope 9:25
3. Sky Reflection 10:58
4. From Sometime 12:22
5. Take a Step 10:54
6. Jet Black 5:52
All composed by Satoko Fujii (BMI)
「地鳴りするような力強さと緩やかな抑制」ージョヴァンニ・ルッソネーロ(ニューヨーク・タイムス)
藤井は今日のジャズ界で最も独創的な一人だ。ジャズ、クラシック、ロック、日本音楽をすぐに彼女の作品と認識できるよう革新的に合成する。多作な作曲家、国際的演奏家でもある彼女はその「芸術的知性、独立性、誠実さ」で2020年”Instant Award in Improvised Music”賞を受賞。2022年、リーダーとしてリリースしたアルバムが100作を超える。
群馬県伊勢崎市出身。11歳の頃にチェロを弾き始め、18歳でコントラバスを始める。奨学金を得て渡米、2006年にバークリー音楽大学を卒業。その直後に移住したニューヨークではピアニストの菊地雅章氏に師事する。2009年に帰国後、日野皓正バンドに加入(2010-16)現在は自身主宰のトリオ、Banksia Trio(バンクシアトリオ with林正蔵、石若駿)をはじめ、渡辺貞夫カルテット他多くのグループに参加。
札幌市生まれ。大山淳氏に師事。中学卒業と同時にプロ活動開始。2011年より渡辺貞夫グループのレギュラードラマーとして活動し、2019年のNYブルーノート公演にも唯一の日本人メンバーとして参加。2016年より峰厚介カルテットに加入。2021年、自身のリーダーバンド(井上銘、魚返明末、三嶋大輝)での1st アルバム「村雨」発売。2022年11月、藤井郷子Tokyo Trioのメンバーとして、ヨーロッパツアーに参加。札幌と東京を拠点に全国で活動している。