150 作を超える映画、テレビのプロジェクトを手がけ、これまでエミー賞を受賞し、オスカー候補にも度重ねて名前を連ねる作曲家ジョエル・グッドマン。本作は、そのジョエルが、現代のジャズ・シーンで活躍する豪華メンバーを集結させ、創り出した壮大な一作となった。
もともと、ジャズのフィールドで演奏活動をし、いつかは、キャリアや生活を考えずにまた演奏したいと考えていたというのがスタート。当初は作品を特別意識したわけではなく、思い浮かんだものを演奏し、書き留めた、とのことながら、そこからの進行は速かった。2021年5月、スタジオに入ってエレキベースで、本アルバム『An Exquisite Moment』の初期スケッチを描き出し、古い友人でプロデューサー/アレンジャーのジョー・マーディンに声をかけ、共同制作のヴィジョンが決まると、数日以内で全曲を書き上げてしまったという。映画、TV音楽の経験も活かして、的確なメンバーを選出。かつての仲間で、今やジャズ界屈指のテナー奏者となったダニー・マッキャスリンを筆頭に、エリック・ハーランド、アダム・ロジャース、そしてスコット・コリー、ミノ・シネルが全曲で参加するコ
ア・グループを結成。ほか、ランディ・ブレッカー、ジョン・パティトゥッチなど、豪華なメンバーの参加も決定。全てのアレンジも整え、9月NYパワー・ステーションで録音した。
特筆すべきは、メンバーへ与えた空間にもある。
「最初の発見を捉えたかった。各ミュージシャンには、リスクを冒してスポンテニアスな演奏をしてほしかった」と語るジョエルは、過剰に準備を要求することはせず、リハーサルもほぼなし。エリック・ハーランドの譜面には特別な指示を加えず、空間を限りなくオープンにしたほか、フロントの即興パートも大きく与えられた。結果、メンバーの生の勢いがグルーヴになり、エモーショナルなブロウも炸裂。インタラクティヴな演奏が繰り広げられ、スリルを生んだ。収録された演奏は、特別なオーヴァーダブをのぞき、全て1,2テイクであるということからも、充実度がうかがわれる。
映像と共に音楽をストーリー性豊かに数十年にもわたって生み出してきたアーティストのコンテンポラリー・ジャズ絵巻。オープニングのブライアン・ヤンガーの起用、ミノ・シネルのパーカッション・ワークなども、ドラマティックである。
Core group:
Donny McCaslin (saxophones)
Eric Harland (drums)
Adam Rogers (guitar)
Mino Cinelu (percussion)
Scott Colley (bass)
Joel Goodman (keyboards and bass)
Special Guest:
Randy Brecker (flugelhorn, trumpet)
Brandee Younger (harp)
Lisa Fischer (vocals)
John Patitucci (bass)
Philippe Saisse (piano, vibes, marimba)
All music composed by Joel Goodman
All arrangements by Joel Goodman with Joe Mardin
except An Exquisite Moment arranged by Joe Mardin and Joel Goodman
Produced by Joe Mardin and Joel Goodman
Recorded at The Power Station, NYC
September 19 & 20, 2021
Elliot Scheiner – Engineer
Akihiro “Aki” Nishimura – Assistant Engineer
Strings & Winds
recorded at Sonic Fuel, LA
December 1, 2021
Josh Margolis – Engineer
Caitlyn Holley – Assistant Engineer
Various overdubs
recorded at NuNoise, NYC
Joe Mardin – Engineer
Mixed at NuNoise by Joe Mardin
Mastered at The Bunker by Alex DeTurk
01 | What Dreamers Dream | 7:41 |
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02 | An Exquisite Moment | 6:00 |
03 | Drifting in Wonder | 7:54 |
04 | Rumi and the Whirling Dervish | 5:34 |
05 | The Mystery of Trees | 7:50 |
06 | A Change of Heart Astral Projection | 8:21 |
07 | mvmt Ⅰ – The Vision | 3:45 |
08 | mvmt Ⅱ – Orbit | 6:19 |
09 | mvmt Ⅲ – Bliss | 3:42 |
10 | mvmt Ⅳ – Exaltation | 1:56 |
total time 59:12
長編映画、ドキュメンタリー、テレビ等の音楽制作で活躍してきた実力派の作曲家。手がけたプロジェクトは150 あまりを数え、エミー賞の受賞ほか、エミー賞、オスカーに度重ねてノミネートされている。音楽のコンポジションは人間のさまざまな感情、機微を表現するもので、ノン・フィクションのドキュメンタリーなどでも高い評価を受けている。
教育的な分野でも活躍。米国とヨーロッパで、マスタークラスを開催するほか、アメリカン・フィルム・インスティトゥート、バークリー音楽院でフィルム・ミュージックのセミナーを開くなど、多忙な日々を送っている。
今後は演奏活動もさらに力を注ぐ予定で、ピアノ・ソロ作品なども構想している。ウォール・ストリート・ジャーナルは「30 年に渡り、数々の卓越したノンフィクション映画などで多くの貢献をしているアーティスト」とジョエルを評価している。